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No.
2025/05/03 (Sat) 07:57:44

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No.5
2011/12/14 (Wed) 04:18:43

「でも、消えたら忘れられちゃうんだよ」
「それでいいんじゃないか。おれたちが四人でこうしている瞬間も、ここで話した適当な言葉も、こうしてユズルが死んでしまって腹の底からびびってることも、全部消えちゃうんだ。消えちゃうってことは、逆にここにいる四人以外には誰にもわからないってことだろ」
 ダイがなぜか階段のステップを手でこすっていた。
「そうか、誰にもわからないような時間や経験を、どうやってつくっていくか。そいつが生きるってことなのかもしれないな。勝ち組とか負け組とかじゃなくてさ」

ユズルの一生は短くなんてない。ぼくたちに与えられた時間は、短くても長くてもみんな平等だ。いつかはすべてをあきらめて、この世界にさよならをいう。最期までじたばたしようが、潔く受け入れようが大差などなかった。強さも弱さもない。若さも老いも関係ない。ぼくたちの命がそんなふうにつくられているだけなんだ。
 石田衣良『16歳の別れ』
 リスニングパワー
 網野智世子
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